下肢静脈瘤とは?

下肢(脚)の静脈が瘤(こぶ)のように膨らんだ状態を下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)といいます。
脚の静脈には多くの弁があり血液の逆流を防いでいます。その弁が機能不全を起こすと、静脈圧が高くなり、静脈が延びる、屈曲する、蛇行する、拡張するなどして瘤を発症します。

網目状静脈瘤

皮膚下の細い静脈が拡張した状態。下肢静脈瘤の中でもっとも多い症状です。

側枝静脈瘤

伏在静脈から枝分かれした交通枝が拡張した状態。下腿にできやすい症状です。

くも状静脈瘤

皮膚内の毛細血管が拡張した状態。血管がクモの巣のように広がって見えます。

伏在静脈瘤

伏在静脈の逆流防止弁が機能しなくなり発症。悪化すると大腿部まで広がります。

下肢静脈瘤を発症する主な原因

下肢静脈瘤は主に静脈の逆流防止弁の機能不全が引き起こす症状です。
それではなぜ、機能不全が生じるのでしょうか? 関連因子として考えられるのは、妊娠出産、立ち仕事・デスクワーク、スポーツ、肥満、加齢、女性など。いずれも脚の静脈が圧迫されるなど、静脈弁への負荷が中長期的に続くことが要因と考えられています。
また、先天的に静脈や弁の機能不全がみられたり、脚の血流が滞りやすい体質をもっているなど遺伝によって発症するケースもあります。

下肢静脈瘤の主な因子

妊娠・出産経験のある女性

女性は妊娠出産による負荷などで下肢静脈瘤を発症しやすい傾向にあります。特に第二子出産以降、出産回数が多いほど発症・悪化のリスクが高くなります。

立ち仕事・デスクワーク

長時間の立ち仕事は血液が脚に滞留しやすく、下肢静脈瘤を発症しやすい傾向があります。座りっぱなしのデスクワークも血液の滞留が起こりやすくなります。

激しいスポーツ

脚に外傷を負うスポーツをしていたり、過去にしていた場合に発症するケースがあります。当院では空手やサッカーをしていた方の症例があります。

肥満

腹圧が高いと下肢静脈や弁への負荷が大きくなります。また、血液中の脂質やコレステロール値が高いと血栓性静脈炎を発症するリスクがあり、静脈瘤に痛みが生じます。

加齢

加齢とともに逆流防止弁の働きは衰えますが、脚への負担は積み重なり、負荷が増えていきます。特に60〜70代の発症率は高くなります。

遺伝

血縁者に下肢静脈瘤を患った人がいる場合は、先天的に発症しやすい体質をもっている可能性があります。遺伝の場合、男女や年齢を問わず発症します。

下肢静脈瘤の主な症状

  • むくみ
  • かゆみ
  • 重い、だるい
  • 疲れる
  • 脚がつる
  • 痛み
  • 色素沈着
  • 潰瘍ができる
初期には静脈瘤が見られるだけで特に症状がないことが多いですが、血液の流れが悪いため、脚のむくみ、かゆみ、脚が重だるく、疲れを感じるなどといった症状が出ることもあります。
症状が深刻化すると皮膚炎や静脈炎がおき、痛みを伴ったり、さらには治りにくい潰瘍になり、手術が必要となる場合があります。
また、茶褐色や黒褐色に色素沈着をすることがあり、放置すれば潰瘍を形成することもあるため、治療を行います。

当院が行う下肢静脈瘤の治療法

基本となる治療法は「圧迫療法」です。脚を圧迫して静脈拡張や下肢静脈の血液停滞を抑えます。
症状が強い方、血液の逆流が生じている方は合併症を引き起こすケースがあり、手術を推奨しています。症状が弱い方、側枝(交通枝)静脈瘤の方は手術をする必要はなく、硬化療法を推奨しています。

圧迫療法

弾性ストッキングを履く治療法。治療用の弾性ストッキングは足首部分の圧力が強く、心臓に向かって圧が弱くなるグラデーション設計になっており、圧迫によって血液の逆流や停滞を抑えることができます。
履くだけで脚のむくみや、脚が重い、だるい、痛いといった症状は軽減することができます。手軽な治療ですが、静脈瘤を消失することはできないため、症状の重い方には手術療法と併用して行います。また、静脈瘤の悪化予防・再発予防には有効な治療といえます。

ストリッピング手術

下肢静脈瘤のもっとも標準的な手術です。局所麻酔下に皮膚を小さく切開し、拡張したり瘤化してしまった静脈を抜き取る手術です。悪化した静脈を切除するため重症の方にも有効で、再発率は低いといわれています。
エコー検査やCT検査を行うことで悪い部分を正確に探し出して手術を行います。リスクはとても少ない手術です。原則として日帰り手術を行っていますが、1泊して手術を行うこともできます。

ストリッピング手術器具

ストリッピング手術器具

高位結紮術(こういけっさつじゅつ)

高位結紮術はストリッピング手術と違い、悪い静脈を抜き取るのではなく、逆流している静脈を逆流しないように血管を縛ります。
局所麻酔でできるため日帰りで手術を行うことができます。小伏在静脈や側枝静脈(交通枝)に症状がみられる場合は、当院では高位結紮術を推奨しています。弾性ストッキングを併用することで再発防止になります。

硬化療法

静脈瘤に硬化剤を注射し、さらに静脈瘤を圧迫して癒着・硬化させて静脈瘤を消失させます。注射した部分は一時的にしこりや色素沈着が起こりますが、次第に薄くなり消失します。治療後は弾性ストッキングを併用することで再発防止になります。

下肢静脈瘤の予防

下肢静脈瘤の発症予防や症状の軽減、再発防止のために取り入れられるセルフケアや日常生活の注意点をご紹介します。

下肢静脈瘤の予防、軽減、再発防止のポイント

医療用弾性ストッキングを着用する

脚を適切に圧迫することで、血液の滞留を防ぎ血管の拡張を抑えます。医療用弾性ストッキングは当院で購入可能です。

生活習慣を整える

肥満は下肢静脈瘤を引き起こす一つの要因となります。適度な運動や規則正しい生活、バランスのとれた食生活などを心がけましょう。

脚のストレッチやマッサージをする

かかとの上げ下げを繰り返すなど、ふくらはぎの筋肉を収縮させるストレッチがお勧め。お風呂でのマッサージも効果的です。

脚を高くして寝る

クッションや枕などを膝下に入れるなどして、脚を心臓より高くして寝ましょう。脚から心臓へと血液が流れやすくなります。

長時間立ちっぱなし、座りっぱなしを避ける

仕事柄避けられない場合は、足踏みやかかとの上げ下げを繰り返すなど、ちょっとした動きを取り入れるだけでも効果があります。

山下 満 医師
山下 満 医師(やました みつる)
資格: (所属学会、専門医・認定医など)
  外科学会 日本静脈学会
日本血管外科学会 心臓血管外科学会
略歴 :
昭和61年 名古屋大学 医学部卒業
昭和61年 名古屋第二赤十字病院 外科
昭和63年 豊橋市民病院 外科
平成03年 藤田医科大学病院(旧藤田保健衛生大学病院)
心臓血管外科
平成30年 医療法人成信会 血管外科

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