閉塞性睡眠時無呼吸症候群とは?
空気の通り道である上気道が睡眠中に狭くなる、または完全に閉じてしまい酸欠が起こり、睡眠が分断される状態を閉塞性睡眠時無呼吸症候群といいます。睡眠の質が低下し、さまざまな合併症を引き起こす可能性のある病気です。
この病気は、人類が直立二足歩行を始めたことに、その契機をもっています。直立二足歩行は、内臓に働く重力を垂直方向に変えました。垂直方向の重力で引き伸ばされた上気道は、高度な発声を約束し、言語の獲得を可能にする一方、外圧に対して脆弱で、睡眠中に何らかの原因が加わると狭くなりいびきをかいたり、閉じて呼吸停止を引き起こすという弱点をもつことになりました。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の主な原因

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の主な原因
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の主な症状・合併症
高度に進化発達した人間の胎児の脳は、睡眠ができあがってから覚醒に至ります。それほど、脳にとって睡眠は必要不可欠なもの。覚醒するためには充分な睡眠が先行している必要があるのです。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群によって良質な睡眠が妨げられると、眠気やいびきといった症状はもちろんのこと、脳が健全に働かなくなり日常生活に支障をきたします。また、症状が長引く場合には、さまざまな合併症を引き起こす場合があります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の主な症状
- 日中の眠気・居眠り
- 大きないびき
- 夜間の頻尿
- 起床時の頭痛
- 記憶力・集中力など脳機能の低下
- 倦怠感
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の主な合併症
- 高血圧
- 脳卒中
- 心筋梗塞
- 糖尿病
- うつ状態
睡眠と脳の関係
脳には覚醒(起きている状態)、ノンレム睡眠(深い眠り)、レム睡眠(起きる準備)の3つのステージがあり、それぞれの状態でまったく異なる働きをしています。

思考、情報収集が活発

大脳の休息、体組織の修復、
免疫機能の増強

体の休息、記録・情報の整理、固定
ノンレム睡眠とレム睡眠を適切に繰り返し、途中で起きるなど中途覚醒が少ないことが、質のよい睡眠の条件であり、脳が適切に活動するための条件です。
睡眠中であっても脳は休息しているだけでなく、日中の活動を維持するために、情報の整理や体調の管理などを活発におこなっています。閉塞性睡眠時無呼吸症候群によってレム睡眠、ノンレム睡眠が妨げられると、脳は大切な仕事ができず、さまざまな症状や合併症を引き起こしてしまうのです。
当院が行う閉塞性睡眠時無呼吸症候群の検査・治療
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は日中の眠気や夜間の頻尿などを伴い、本人が自覚しやすいといえますが、寝ている間の無呼吸状態などは家族や身近な人が気づいたら、検査・治療を促すことも大切です。睡眠を記録するアプリなどを活用するのもお勧めです。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療法
CPAP(シーパップ)治療
マスクを介して鼻から持続的に空気を送ることで、狭くなっている気道を広げます。睡眠改善の効果が立証されていることから、世界的にもっとも普及している治療です。CPAPには睡眠監視システムが搭載されており、無呼吸が起こった回数や時間、重症度指数などが記録され、症状の改善を数値で確認できるのが最大のメリットです。CPAP器をつなぐマスクも色々あります。



マウスピース
マウスピースを装着し、下顎を前方に保持して気道を広げる治療法です。大掛かりな装置などは一切必要なく、手軽に治療を行うことができます。マウスピースは、歯科、歯科口腔外科にて作成していただくことになります。
鼻腔挿入デバイス
左右どちらかの鼻に柔らかいストローのような管を通し、気道を確保して呼吸を維持します。装着しても外見を邪魔せず、装着した状態で会話や飲料の摂取も可能です。ナステントのフィッティング、購入時に必要な指示書の作成は、当科にて行っています。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群セルフチェック
閉塞性睡眠時無呼吸症候群ではないか?と思ったら、まずはセルフチェックを行いましょう。
質問 1. 座って何かを読んでいるとき(新聞、雑誌、本、書類) | |
うとうとする可能性は… | ほとんどない0点 |
少しある1点 | |
半々くらい2点 | |
可能性が高い3点 |
質問 2. 座ってテレビを見ているとき | |
うとうとする可能性は… | ほとんどない0点 |
少しある1点 | |
半々くらい2点 | |
可能性が高い3点 |
質問 3. 会議、映画館、劇場などで静かに座っているとき | |
うとうとする可能性は… | ほとんどない0点 |
少しある1点 | |
半々くらい2点 | |
可能性が高い3点 |
質問 4. 乗客として1時間続けて自動車に乗っているとき | |
うとうとする可能性は… | ほとんどない0点 |
少しある1点 | |
半々くらい2点 | |
可能性が高い3点 |
質問 5. 午後に横になって、休息をとっているとき | |
うとうとする可能性は… | ほとんどない0点 |
少しある1点 | |
半々くらい2点 | |
可能性が高い3点 |
質問 6. 座って人と話をしているとき | |
うとうとする可能性は… | ほとんどない0点 |
少しある1点 | |
半々くらい2点 | |
可能性が高い3点 |
質問 7. 昼食をとった後(飲酒なし)、静かに座っているとき | |
うとうとする可能性は… | ほとんどない0点 |
少しある1点 | |
半々くらい2点 | |
可能性が高い3点 |
質問 8. 座って手紙や書類などを書いているとき | |
うとうとする可能性は… | ほとんどない0点 |
少しある1点 | |
半々くらい2点 | |
可能性が高い3点 |
※出典: ESS日本語版(JESS™️ :Japanese version of the Epworth Sleepiness Scale)
Copyright, Murray W. Johns and Shunichi Fukuhara. 2006.

資格 : | (所属学会、専門医・認定医など) | |
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呼吸器科専門医 | 内科認定医 | |
日本睡眠学会会員 |
略歴 : | 昭和42年 | 名古屋大学 理学部 物理学科卒業 神戸大学 理学部 物理学修士課程修了 |
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昭和56年 | 名古屋大学 医学部修了 | |
その後 | 安城更生病院 内科研修医 豊田厚生病院(旧厚生連加茂病院) 呼吸器科 東名古屋病院(旧国立療養所東名古屋病院) 呼吸器科 中東遠総合医療センター(旧掛川市立総合病院) 呼吸 器科部長 豊田厚生病院 呼吸器科部長 豊田睡眠呼吸障害治療クリニック |
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平成25年 | 医療法人成信会さくら病院勤務 |